一般審査員も参加の世界有数のユニークな音楽祭「大阪国際室内楽コンクール&フェスタ2023」 6年ぶりに開催

TopicsChamber Music,festival,music

■文:瀬戸優

 音楽ファン待望の「大阪国際室内楽コンクール&フェスタ2023」が、5月12日から18日まで大阪をはじめ各会場で開催された。1993年の第1回から3年ごとにおこなわれてきたが、2020年の第10回大会は、新型コロナウイルスの影響により余儀なく中止。今年はなんと6年ぶりの開催となった。この祭典は、2部門で構成され、若手奏者で編成するアンサンブルが参加する「コンクール」部門と、楽器や年齢の制限なしの2人から6人までの器楽アンサンブルによる「フェスタ」部門が同時に開催される。

 さて、この「フェスタ」部門の注目すべきユニークな点を再度挙げておく。
(前回の紹介記事はこちら→https://meet-the-topics.com/event-16/

●2人から6人までのアンサンブルであれば楽器の組み合わせも自由、国・地域、年齢制限もない
●クラシック音楽はもとより、世界各国の伝統音楽・民族音楽も対象
●課題曲はなく、演奏時間は25分間で5曲以内
●優勝者を決めるのは、応募で集まった一般審査員
 
 今回の「フェスタ」部門では、世界30か国84団体の応募から、予備審査を通過した11か国12団体が参加、第一ラウンド、セミファイナル、ファイナルと進み、3日間おこなわれた。
 第一ラウンドは、富山と三重(5月13日:富山県高岡文化ホール。5月14日:三重県文化会館)。各6団体が出場し、会場に集まった一般審査員の投票により各3団体が選出された。
 セミファイナル、ファイナルは、大阪(5月17日:大阪住友生命いずみホール)でおこなわれ、富山と三重で選出された計6団体が出場、会場の一般審査員に加え、オンライン審査員の投票により、上位三位とオンライン聴衆賞が決定した。

結果は、次の通り。
【写真提供:日本室内楽振興財団ⓒ日本室内楽振興財団】

■メニューイン金賞 テンゲル・アヤルグー(モンゴル)
■銀賞 クインテット・バトー・イーヴル(フランス)
■銅賞 スタス&タチアナ(アメリカ)
■フォークロア特別賞 テンゲル・アヤルグー(モンゴル)
■オンライン聴衆賞 クワチュオール・エオリーナ(フランス)、テンゲル・アヤルグー(モンゴル)、東京リード・クインテット(日本)

メニューイン金賞&フォークロア特別賞&オンライン聴衆賞
テンゲル・アヤルグー(モンゴル)
写真:日本室内楽振興財団ⓒ日本室内楽振興財団
テンゲル・アヤルグー(モンゴル)
銀賞 クインテット・バトー・イーヴル(フランス)
銅賞 スタス&タチアナ(アメリカ)
オンライン聴衆賞 
クワチュオール・エオリーナ(フランス)
オンライン聴衆賞
東京リード・クインテット(日本)

 筆者は、富山と大阪のオンラインでの一般審査員として参加した。富山の第一ラウンドでは、審査委員長の呉信一氏の「音楽を楽しみながら、自らの感動を基準に投票をしてください」という挨拶からスタート。厳しい予選を通過した団体が、次々と独自の世界を披露していく。ほかではなかなか見ることのできない楽器やアンサンブルの紡ぎだす音に引き込まれ、制限時間の25分間があっという間に過ぎた。

投票のためのプラスチック札
貼りだされる投票結果

 投票は、午前と午後、各3団体の演奏を聴いた直後、ステージ前に設置された投票箱に小判型のプラスチック札を入れるという流れ。投票が終わるとすぐさまスタッフがその場でカウントし、司会者から結果が発表されボードに数字が張り出される。会場席には、出演した音楽家たちも緊張しながら、投票結果を固唾をのんで待っている。最も票数の多かった音楽家たちは、ステージにあがり仲間と喜びを分かち合い、会場からは暖かい拍手が沸き起こった。

 大阪でおこなわれたオンライン聴衆賞の発表の際は、会場がどよめいたという。なんと3組が同票でトップという結果になったそうだ。事務局も想定外のことで、記念の盾を増産中とのこと。なにが起こるかわからない、演奏が終わったあともエキサイティングなフェスタなのだ。このような室内楽の祭典がこれまであっただろうか。次回のフェスタは3年後に開催される。今から待ち遠しくて仕方がない。