スターダスト☆レビュー  『スタ☆レビ 40周年 東西あわせて108曲煩悩ライブ』が完結! 約420分にわたって大阪城ホールを沸かせる

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■取材・文 / 原田和典  写真 / 加藤正憲

聴かせて、酔わせ、楽しませ、ほほえませる約7時間

撮影:加藤正憲

 歌えば歌うほど、演奏すれば演奏するほどヒートアップしていくではないか。こうしたバンドこそ、怪物級と呼ぶにふさわしい。
スターダスト☆レビュー『スタ☆レビ 40周年 東西あわせて108曲煩悩ライブ』の大阪公演が6 月 11 日に大阪城ホールで行なわれた。約7時間(休憩あり)で披露されたのは、計59曲。その前週にあたる6月4日には、さいたまスーパーアリーナで、やはり計59曲からなる関東公演が行なわれたばかりだ。当初は、両日とも58曲、共通で披露されたナンバーを1曲と計算して、あわせてちょうど108曲、煩悩の数でセットリストが構成される予定だったというが、ファンにとっては実に嬉しい、プラスアルファを含むステージとなった。
 どちらの公演でも、オーディエンスの誰もが、それぞれの熱い「スタ☆レビ体験」を胸に会場にかけつけたはずだ。ぼくはどうしても現場に行くことができず配信で見たのだが、当然ながらわくわくして、初めてスタ☆レビのライブに接した遠い昔のことまで思い出してしまった。自分は1986年の真夏、北海道旭川市で行なわれた野外フェスで衝撃を受けた。それは晴天の霹靂というべきものだった。なぜならそのフェスのメインは大巨匠レイ・チャールズ、ほかにはバブルガム・ブラザーズ(「WON’T BE LONG」を出す4年前)、ジャズ・サックス奏者のビリー・ハーパーなどが出るというゴッタ煮的ラインナップであり、ぼくは長年の憧れであったレイ・チャールズとビリー・ハーパー以外は眼中にないという感じで、旭川駅前から会場に向かうバスに乗ったからだ。
ほとんど正午、そのイベントの一発目に出てきたのがスタ☆レビだった。失礼ながら自分は彼らの歌を1曲も知らず、そもそもグループ名すら初耳だった。が、太陽照り付ける真昼間だというのにピシッと爽やかにジャケットを着こなし、的確な演奏、絶妙なハモリで、次から次へとキャッチーな曲を届ける彼らに、どんどん引き込まれていった。一度も聴いたことがない曲であるのは間違いないのに、聴き終わるとメロディや歌詞がしっかり体に刻まれている。「What A Nite!」、「夢伝説」、「Thank You」、「噂のアーパーストリート」、「今夜だけきっと」、アカペラで「ソー・マッチ・イン・ラヴ」、このあたりは確かに聴かせてくれたはずだ。
 その数十分でスターダスト☆レビューというグループ(まだスタ☆レビという略称は知らない)をすっかり認識して好きになって、熱に浮かされたように友人(いまもアマチュアのロックバンドで歌っている)と会場をぶらぶらしていたら、向こうからもうひとりの友、加藤くんが近づいてきた。「すげえかっこいいグループだなあ。どうやったらあんなにギターを弾きながら歌えるんだ?」。この加藤くんは今、加藤MAAという芸名でギターを弾き語っている。初めて単独公演を旭川市公会堂で見たのはアルバム『RENDEZ-VOUS』のツアーだから88年のことか。とんでもなく素晴らしく、かっこよく、でもMCではたっぷり笑わせてくれた。昭和が終わろうとしている頃の話だ。

どのセクションからも、スタ☆レビの歴史、現在の充実ぶりが伝わる

撮影:加藤正憲


 平成が過ぎ、令和になって何年目かの今、スタ☆レビは力強さをさらに増してライブ・バンド道を突っ走り、自分は嬉しさを目いっぱい感じながら、彼らのサウンドに耳を傾けている。生きている幸せを感じる瞬間だ。それにしても、この膨大な曲数をどう届けるのか? スタ☆レビのことだから、ただ発表順に歌って演奏して終わり、というようなことはしないはずだ。そう、確かに彼らはそうしなかった。ではどうしたのか。ほとんどの場面を「コーナー別」にわけたのだ。本で言えば、分厚い書物の中に、すごく興味をそそられる見出しがいくつもついている感じである。
 根本要、柿沼清史、寺田正美、林“VOH”紀勝からなる不動のメンバー、申しぶんないサポート・メンバーである添田啓二、岡崎昌幸、そしてホーン・セクションが、広大なステージにスケールの大きなサウンドを充満させてゆく。「アルバムの1曲目」、「アルバムの2曲目」、「プロモーションビデオのある曲」(それらの曲が新曲として発表された当時の映像がスクリーンに映し出され、それを背後にいま現在のスタ☆レビが演唱する)、「おバカソング」、「がっかりタイアップ(=タイアップが、それほど盤のセールスに結びつかなかった)」、「バラード」、「アカペラ」、「根本要以外のメンバーのリードボーカル曲」など、いろんな角度から古今東西のスタ☆レビ・ソングに光が当たった。「木蘭の涙」、「トワイライト・アヴェニュー」等の定番から、デビュー曲「シュガーはお年頃」、ライブで歌うのは相当レアであろう「1%の物語」、近年の代表曲「はっきりしようぜ」まで、楽しいMCを交えながらの、至福の時間が拡がる。なにしろ40周年である。親子、いや、親子孫でスタ☆レビのファンになっている一家も、もう出てきているはずだ。
 締めくくりであるはずの58曲目は、「今夜だけきっと」。しかしここで根本から“ノーカウントでもう1曲”との声が出て、「めぐり逢えてよかった」がアンコール替わりに披露された。めぐり逢えてよかった——この日のステージにおいて、これ以上にふさわしく、重みのある言葉はない。

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