「夏だ音頭だ浪曲だ 瑞姫の浪曲を聴く会」 浪曲+河内音頭で広がる飛び切りの名人芸
■文:原田和典
浪曲アルバム『浪曲狸』と河内音頭アルバム『TAMAKI』の同時発売でも話題を集める瑞姫が、6月22日に東京・浅草木馬亭で「夏だ音頭だ浪曲だ 瑞姫の浪曲を聴く会」を開催した。昨夏の「聴く会」は6月30日の開催だから1週間ほど早まったわけだが、地球そのものの気温も前倒しで上昇しているのが現実である。まだ6月22日だというのに、2025年のこの日はすっかり「猛暑」であった。そんななか、歴史のある、冷房の利いた場内で、飛び切り活きのいい名人芸を味わえるのは本当に嬉しいものだ。しかもPAを導入した音響はメリハリに富んでいる。
第1部は「関取稲川重五郎江戸日記」。上方相撲の往年のスター関取・稲川重五郎が、もう一花咲かせようと東上、江戸相撲に出場したら連戦連勝をしてしまった。だがちっとも人気者にならない。まあ、それはそうだ。丁々発止なく一方的に勝ってばかりでは盛り上がりに欠けるし、そもそも「よそ者」がいきなりやってきて勝ちに勝ってしまったら、江戸に根付いた「見る者」はそこにストーリーを重ねようがない。そこで重五郎は
引退を決め、故郷に戻ることにするのだが・・・・「乞食」とのひょんな出会いや魚河岸の若者頭である辰造とのコミュニケーションが展開に深みを加える。瑞姫は各キャラクターを細かに演じ分け、とくにまろやかな低音の響かせ方は絶品。特注の糸巻きのついた三味線を弾く曲師の虹友美との呼応も快い。
第2部は昨年12月21日の「『浪曲狸』発売記念 瑞姫の浪曲を聴く会」で披露されて場内を大いに沸かせた三遊亭白鳥作「任侠流れの豚次伝 第一話~豚次誕生秩父でブー。」の続きにあたる「任侠流れの豚次伝 第二話~上野掛取動物園」。物語はどんどん進み、今回は、上野動物園に虎の餌として運ばれてきた豚次が、上野白黒
一家のパンダ親分に認められて子分になるところからスタート。親分は清濁あわせのむところがあるようだが、豚次は「濁は許せない」というタイプ。物語では、その男気がフルに発揮されてゆく。何から何まで特別扱いであろう人気動物・白黒熊に、ひるむブタではないのだ。私も聴いているうちにノッてきて、「いいぞ、豚次」と
心の中で声をあげた。「ラスカル」人気も今は昔のアライグマや、コンドルのキャラクターが実に濃く描かれていたのもいい。あと、「月曜日(=公開のない日)の動物たち」があんなに殺伐としていたとは・・・
さらにこの日は、もうひとつお楽しみがあった。「河内音頭 櫻川と黒鷲」の披露だ。河内音頭はダンス・ミュージックである共に、「じっくり聴かせる」性格も持っている。だから木馬亭との相性もいい。アルバムとライヴのプロデューサーであるいちばけい(ザシキレコーズ)のエレクトリック・ギター、小池梨沙の太鼓が加わ
った4人によるパフォーマンスは、ついアンコールを求めたくなるほどであった。
瑞姫は来たる7月30日と31日には「第43回 すみだ錦糸町河内音頭大盆踊り」(立川親水公園特設会場)に登場、30日には初のトリをとる。また8月29日には大阪での瑞姫の会にあたる「瑞姫(たまき)の浪曲寄席」の第7回「ラッキーセブンのひとり語り」を船場センタービル2号館地下2階 SEMBA2プレ~スで開催する。
★第43回 すみだ錦糸町河内音頭大盆踊り
開催日:2025年7月30日(水)、31日(木)
開催時間:17時30分~21時00分頃
会場:立川親水公園特設会場
お問い合わせ:錦糸町河内音頭公式サイト
https://www.kinshicho-kawachiondo.jp/
★第7回 瑞姫(たまき)の浪曲寄席 – ラッキーセブンのひとり語り
開催日:2025年8月29日(金)
時間:開場 13時00分、開演 13時30分
会場:船場センタービル2号館地下2階 SEMBA2プレ~ス(〒541-
0055 大阪府大阪市中央区船場中央1丁目3−2)
お問い合わせ:ザシキレコーズ Tel 043-400-3038
(平日09:00 -17:00)