この日限りの豪華メンバーと、リスナー心に訴える選曲。品川区の名物「第18回しながわジャズフェスティバル」が今年も盛大に開催

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■文:原田和典 写真:瀬戸優

 1989年の第1回「なかのぶジャズフェスティバル」から、今年で35年。オールスター・メンバーによる、この日・この時限りの演奏が楽しめるジャズの祭典「第18回しながわジャズフェスティバル」(主催:品川音楽企画)が3月17日、品川区・荏原文化センター大ホールで開催された。今年の出演メンバーは峰厚介(テナー・サックス)、市川秀男(ピアノ)、中村誠一(テナー・サックス、クラリネット)、鈴木良雄(ベース)、本多俊之(アルト・サックス)、納浩一(ベース)、松島啓之(トランペット)、小山太郎(ドラム)、井上智(ギター)、スガダイロー(ピアノ)、纐纈歩美(アルト・サックス)、市原ひかり(トランペット、ボーカル)、相川瞳(パーカッション)、山本玲子(ヴィブラフォン)、江藤良人(ドラム)、中路英明(トロンボーン)。彼らが曲ごとにユニットを組み、セッションリーダーをおいて、有名なメロディを素材にこの時限りのジャズを聴かせる。

京浜 Jazz Explosion
片野麻代

 フェスティバルは、やはり荏原文化センター 大ホールで1月に開催された「第4回品川区アマチュアジャズコンテスト」のウィナーたちによるパフォーマンスで幕を開けた。ビッグバンドの京浜 Jazz Explosionは、「ロウ・ダウン」(サド・ジョーンズ作)と、コンテスト当日も演奏された「ワープ9」(バート・ヨリス作)を演奏し、ボーカル部門のウィナーであった片野麻代は市川、鈴木、小山のトリオをバックに「オン・ア・クリア・デイ」を歌った。

市川秀男
市原ひかり
松島啓之

 第2部は【名曲集 あなたが選ぶ名曲ベスト5】。事前に候補曲をリストアップし、ファンの投票によって上位5曲を決定。それを他では見られない顔ぶれでお届けしようという、実に楽しい企画だ。監修は市川秀男が務めた。

1位 ピアノ・マン (ビリー・ジョエル) 
2位 慕情 (サミー・フェイン)
3位 ムーンライト・セレナーデ (グレン・ミラー楽団)
4位 ホテル・カリフォルニア (イーグルス)
5位 イパネマの娘 (アントニオ・カルロス・ジョビン)

 演唱は第5位から行われたが、いきなり「イパネマの娘」がボサノヴァ調ではなくスウィンギーに演奏されて新鮮味をまき散らす。ビッグバンド・ジャズの定番といっていい「ムーンライト・セレナーデ」は市原の歌声をフィーチャーしたメロウなアレンジで届けられ、かと思えば「慕情」では、クリフォード・ブラウン&マックス・ローチ・クインテットの同曲(アルバム『アット・ベイズン・ストリート』収録)におけるリズム・パターンを再現。松島啓之のプレイから、彼がいかにモダンジャズを愛し、聴きこんできたかが伝わってきたのは私だけではないはずだ。

中村誠一
納 浩一

 第3部【しながわスプリングジャム】のセッションリーダーは中村、納、市原、松島、本多、峰。ジミー・ヒース作「サッシー・サンバ」、デイヴ・グルーシン作「ショップ・ティル・ユー・バップ」など、知る人ぞ知る、しかし知っておくと楽しいナンバーから、マイルス・デイヴィス「マイルストーンズ」(1958年のほう)のようなジャズの大定番までが、文字通りのワンタイム・パフォーマンスとして届けられた。メンバー各人は、与えられたスペースの中にしっかり起承転結を盛り込みながらアドリブの妙を聴かせる。第2部でも開演した松島は、ディジー・ガレスピー作「フィエスタ・モジョ」でも乗りに乗ったプレイを聴かせた。ラストはメンバー全員で、中村が作編曲した「しながわジャズフェスティバルのテーマ」を演奏。小山太郎と江藤良人のツイン・ドラム+相川瞳のパーカッションの賑やかな絡みに、場内は沸きに沸いた。3時間におよぶ、息つく間もないジャズの宴。春の訪れを感じさせる、実に嬉しいひとときだった。

山本玲子
本多俊之
市原秀男 峰 厚介
中路英明
纐纈歩美
鈴木良雄
江藤良人
相川 瞳

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