音楽愛がほとばしる爆笑ステージ。マキタスポーツが単独ライブ「オトネタ6」を盛大に開催

Topicslive,music,theatre

■文:原田和典 

 芸人・ミュージシャン・俳優・文筆家として幅広い活動を続けるマキタスポーツが、4月21日に東京・草月ホールにて単独ライブ「オトネタ6」を開催した。
 「オトネタ」はマキタスポーツが活動の中心に据えているプロジェクトで、第1回目は2009年に行なわれた。音楽愛がほとばしる、ときに批評精神もギラリと光る演目の数々には「爆笑させてくれるところ」と「内省させるところ」があり、見終わった後に「ああ、音楽が好きでよかった」という気持ちに包まれる。すごく爽快なエンターテインメント+エデュケ―ション=エデュティメントに出会わせてくれるのだ。
 冒頭からマキタスポーツは、ギタリストとしての魅力を炸裂させた。まだロックやポップスの楽曲にギターの強烈な前奏があったり、ギターのリフが音作りを引っ張っていた時代のナンバー、たとえば「ジョニー・B・グッド」、「胸いっぱいの愛を」、「スモーク・オン・ザ・ウォーター」、「マイ・シャローナ」等のイントロを実に気持ちよさそうにつまびく。スクリーンに映し出された曲に関する的確なコメントからは、音楽評論家としての一面もうかがえる。
 エレクトリック・ギターの轟音で会場を満たした後は、漫談のコーナーへ。観客のほとんどを占めているであろう同世代のファンに軽やかにツッコミを入れつつ、ヴィヴィッドな時事ネタを昭和歌謡のメロディにのせて歌い上げた。身のこなしの軽さ、キビキビとした動きが最大限に発揮されたのは「カッコいいラジオ体操」。あの「ラジオ体操第一」にハイパーなアレンジが施され、マキタスポーツはマイケル・ジャクソンや岡村靖幸風の動きも取り入れながら観客から盛大な拍手を引き出した。

 二回登場したコント「ウタのチカラ」では、ワイルドなセリフと美麗な歌声のコントラストで盛り上げるなど、マキタスポーツならではの趣向で笑いを取り、セットチェンジ中には“再評価されている楽曲”としてシティポップ風の「オーシャンブルーの風のコバルトブルー~何も感じない歌~」(2013年のメジャーファーストアルバム『推定無罪』に収録)、“コンプラ的に難しいかも”との声もあるという「デスドナルド」(ロックバンド「マキタスポーツ presents Flyor Die」の楽曲)の映像も紹介。さらにマキタスポーツは、新宿西口で突然もよおした男がお手洗いを探して苦闘するひとりミュージカル「Poop comes out」で、登場人物3人のキャラクターや声を使い分けながら見事に物語を演じきった。落語の場合、演じ分けは声色や顔の向きで行なうが、マキタスポーツは各キャラクターの立ち位置を決め、その間を高速で移動しながら会話や歌唱を繰り広げていく。西口(ウエスト・サイド)が題材だからなのか、音楽にはレナード・バーンスタイン作「ウエスト・サイド・ストーリー」に通じる雄大さがあり、マキタスポーツの歌声もドラマティックに鳴り響いた。YouTubeで話題の、もはやライフワークと言える“さざんかの宿の旅”(大川栄策「さざんかの宿」の歌詞を、他の曲のメロディに当てはめる)はさらに進化し、ラストにはこの単独ライブシリーズの定番である「オトネタのテーマ」も披露。音楽エンターテイナーとしてのマキタスポーツの底力に、またしても酔わされた2時間であった。

Topicslive,music,theatre

Posted by editor