瑞姫 「落語の噺で浪曲会 瑞姫の浪曲を聴く会」を開催。「鰍沢」と「任侠流れの豚次伝 任侠流山動物園」でオーディエンスを魅了

Topicsevent,traditional culture

■文:原田和典

 浪曲アルバム『浪曲狸』と河内音頭アルバム『TAMAKI』がロングセラーを続ける瑞姫が、11月30日に東京・浅草木馬亭で「落語の噺で浪曲会 瑞姫の浪曲を聴く会」を開催した。前回の「聴く会」の時は外が猛暑だった記憶があるのだが、今回はまだ11月だというのに、すっかりあたりは冬。そこをあたためてくれたのが、瑞姫と曲師・虹友美のコンビネーションである。
 第1部は「鰍沢(かじかざわ)」。2023年発表のアルバム『浪曲鰍沢』のタイトル・チューンだが、そこはライヴゆえ、同じようにはいかない。新しい節(節)を取り入れた、メリハリに富むパフォーマンスは、まさに鰍沢の2025年型といっていい。江戸の大工・新助が身延山参りの帰りに雪道に迷い、山中の一軒家に一宿を請う。
それをあたたかく迎えたのが、家の女房であるおくま。だがどうしたものだろう、新助はその顔に見覚えがあった。意を決して「人違いでしたらお詫び申し上げますが・・・」と尋ねてみると、まさに同一人物であることがわかり、おくまと新助の会話がはずむ。卵酒で眠くなってしまった新助を残し、おくまは酒を買いに外へ。その
間に膏薬売りの亭主が戻ってきたのだが・・・その3年後の描写も含めて、スリル(物語)+コントラス(声)+グルーヴ(三味線)の一体感をしたたかに味わった。
 客席から「たっぷり!」という声も勢いよく飛び出した第2部は、いよいよ三遊亭白鳥作「任侠流れの豚次伝」。今回は「第三話~任侠流山動物園」である。主人公は、男気たっぷりの豚次だ。かつては上野動物園にいたが、パンダ親分に逆らってアライグマ親子を助けたためにそこを追われ、今は千葉の河川敷にある流山動物園にいる。盛況の上野とはうってかわって寂れていて、メンバーは老アフリカゾウの政五郎、チャボのチャボ子、牛のギュウ太、そして豚次。食うにも困る始末でチャボ子はケンタッキーへの身売りも考えている。
ある日、政五郎の体調が崩れた。が、獣医に診てもらう金もない。豚次は園長から「上野動物園にいたのだから、どうしたら客が来るのかを教えてほしい」と求められる始末。そこで豚次は上野に飛んで、パンダ親分に、頭を下げて助けを乞う。だが向こうは海を越えてわざわざやってきたスーパースター、尊大という概念が白黒獣に化けたようなキャラクターだから、豚次の懇願など簡単にあしらわれ、けんもほろろに追い出されてしまう。そこで・・・ 時間があっという間に経つ。頭の中でそれぞれのキャラクターをイラスト化して、動かしてしまったオーディエンスは私だけではないはずだ。

 次回の「瑞姫の浪曲を聴く会」は2026年6月に開催予定。今度は何が聴けるだろうか。