一層パワーアップしたサウンドに包まれた5時間半。ロックの原点を自然とともに楽しむ「三浦ロカビリーまつり」が今年も盛大に開催!

Topicslive,music,rockabilly

■文:写真 原田和典

 昨年の11月27日に開催された第1回が終了してから、第2回が行われる日を今か今かと待っていたファンも多いはずだ。そして、その時は来た。
 去る12月3日の午前11時から、神奈川県三浦市三崎の「うらりマルシェ」2階の展望デッキでライブイベント「三浦ロカビリーまつり 2023」が開催された。ロカビリーとは、いわばロックの原点に位置する音楽。1950年代のアメリカで、白人のカントリー&ウェスタンに黒人のリズム&ブルースが融合し、やたら新しく刺激的でかっこいい響きが生まれて、それは瞬く間にヨーロッパやアジアに広まった。それから約70年。このロカビリーまつりには、日本屈指の現役ロカビリアンたちが集い、個性を競った。
 バンドの楽器編成はエレクトリック・ギター(グレッチ)、アコースティック・ベース、ドラムが主体。ベースは基本的にスラップ奏法で迫る。が、各プレイヤーともセッティングにこだわりがあり、ドラムにしてもタムの数、シンバルの数などが奏者によって異なる。そのあたりの違いを目の当たりにできるのも、楽器ファンにはたまらないところだ。
 午前11時を過ぎた頃にギタリストの山口憲一と、総合MCを務めたバーレスクダンサーのナホコロールが登場し、「ガレージバンド」を紹介する。三浦と横須賀を拠点に約10年にわたる活動を続ける、主催イベント「ガレージ・パラダイス」も好評の5人組だ。空模様は、第1回目と同様に快晴。いささか風が強く吹き付けたが、演唱の放つ熱気は尋常ではない。バンドも、観客も、皆、この日を待っていたのだ。「上を向いて歩こう」が、こんなにロカビリーに合うとは。とてもうれしい発見をした気分だ。

 続いては「山口憲一&ロカビリー・スペシャルズ」。1990年にロカビリーバンド「MAGIC」でメジャーデビュー、ほかGRETSCH BROTHERS、B・A・T等、さまざまなユニットで活動する三浦在住の名ギタリストが、手の届きそうな距離で至芸を見せてくれるのだから嬉しさは高まる。「ハウンド・ドッグ」で始まり、ステージの途中からは、“ウィズ・フレンズ”的な展開に。かつて同じ所属事務所だったBLUE ANGELの浦江アキコ(役者としての一面も持ち、福山雅治とテレビドラマで共演したことも)は「HAPPY BIRTHDAY」や「君にTRY AGAIN」、THE GRETSCH BROTHERSで山口と共に活動する日野勝雄は「サマータイム・ブルース」等を熱唱した。このセットを締めくくったのは、MAGICが93年に発表した「天使のジェラシー」。盛り上げに盛り上げて、メンバーたちは颯爽とステージを去った。

 来年、結成25周年を迎える「タイガーリリー」はロカビリー、ヒルビリー、R&Bなど1950年代の音楽にこだわったグループ。ギター&ヴォーカルのジュンコ、ベースのヒロシのコンビは第1回同様、見事に息の合ったプレイを聴かせた。ナット・キング・コールの代表曲「プリテンド」のロカビリー化に始まり、ヒロシの書き下ろした「Such a Blue」、バーバラ・ピットマンのカヴァー「アイ・ニード・ア・マン」など、そのサウンドは実に味わい深い。

 「シツレイ・キャッツ」は、Jポップをロカビリー化するバンド。歌、演奏、ダンス、どれもとんでもなくエンタテインメント性に富んでいて、展望デッキはまるでパーティ会場のようになった。NAGOはヴォーカルだけではなくカズーでもパワーをふりまき、エディ・コクラン「カモン・エヴリバディ」とAKB48 「会いたかった」の合わせ技、ベースの低音がビンビンに響くピンク・レディーのカヴァー「UFO」、西城秀樹と沢田研二のヒット曲の題名をつなげて歌詞にした「ヒデキとジュリー」などを立て続けに届けた。

 1987年結成の重鎮グループ「キャメル・クラッチ」は、メンバー全員が横須賀出身だ。チャビー・チェッカーのカヴァー「レッツ・ツイスト・アゲイン」で乗せ、新曲「VACATION」では観客に
“V・A・C・A・T・I・O・N”の振りつけを教えて、文字通り場内が一体となったパフォーマンスも展開。「キミはTEDDY GIRL」の親しみやすいメロディ・ラインも実に心地よい。力強いベース・プレイを聴かせた栗田直人は、このライヴのあとしばらく休養に入るとのことだ。パワーアップした復帰を心待ちにしたい。

 ロカビリーまつり初登場となる「ホットドッグバディバディ」は、2002年の結成。これまで8枚のアルバムを発表、日本語のオリジナル曲を中心とした音作りで人気を集めてきた。天谷カズオのヴォーカルとギターが牽引するバンド・サウンドは、まさにワン&オンリーの味わい。「GO!GO!ロカビリーWORLD」、「ロカビリー色で塗りつぶせ」等を会場に響き渡らせた。

 気が付くとすっかり夕方、「冬将軍」という言葉が浮かんできそうなほど冷え込んできた。そこに暖かなパフォーマンスを持ち込んだのは、全日本ロカビリー普及委員会の会長も務めるビリー諸川だ。
 軽妙なMCも交えつつ、恩人“シャネルズ”の「ランナウェイ」、ハワイアンダンサーたちも彩りを添えた「ブルー・ハワイ」などをアコースティック・ギターの弾き語りで届け、そのままノンストップで、2回目にしてすでにロカビリーまつりの名物になった観もあるジャム・セッションへ移行。「ジョニー・B・グッド」、「ブルー・スエード・シューズ」を寒空に轟かせ、2023年度のロカビリーまつりは幕を閉じた。気持ちの行き届いた運営スタッフ、飲食やDJの充実ぶりも特筆しておきたい。第3回目は2024年11月に開催予定。

Topicslive,music,rockabilly

Posted by editor