島田歌穂が人気コンサート・シリーズの第4弾を開催。今回のテーマは“ジャズ×ミュージカル”、スペシャル・ゲストは上白石萌音!

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■文:原田和典

 “ミュージカルがもっと好きになる!”をテーマにした人気コンサート・シリーズ「島田歌穂 Musical, Musical, Musical!!」のvol.4が、7月21日に東京・新宿文化センター大ホールで開催された。同シリーズは、「今までにない新しい形で、沢山の方にもっとミュージカルを好きになってほしい」という島田の思いを反映して、2019年夏に “参加型コンサート” としてスタート。一時期コロナ禍によって中断していたが、昨年から復活した。
 今回のテーマは“ジャズ×ミュージカル”。共演ミュージシャンには夫君の島健(ピアノ、音楽監督、作編曲)を筆頭に、納浩一(ベース)、渡嘉敷祐一(ドラム)、竹村直哉、近藤淳也(サックス他)、真砂陽地(トランペット)、半田信英(トロンボーン)が揃った。ビッグ・バンドの音の厚みとコンボの奔放さを兼ね備えた編成とアレンジにのって、島田歌穂は数々のスタンダード・ナンバーを快唱した。
 いうまでもなくジャズとミュージカルは、切っても切り離せない関係。何億曲と存在するであろうグレイト・アメリカン・ソングブックの中から、どんな演目が出てくるのか、ひたすらわくわくしながら客席についたのだが、オープニングは、なんと「シング、シング、シング」。そう、あの、ジーン・クルーパが参加したベニー・グッドマン楽団の名演があまりにも有名な、“クラリネットとドラムがやたら大活躍する長い曲” である。が、もともと、これはヴォーカル・ナンバーとして、トランペット奏者兼歌手のルイ・プリマによって作られており、逆に言えば、これでもかとクル―パがドラムを叩きまくるジミー・マンデイの編曲が破天荒なものだったのだ。2023年の新宿で“この曲の、元来の形”を聴くことができて、私は胸のすくような気持ちになった。

「マック・ザ・ナイフ」(「モリタート」)では日本語の歌詞を採用し、この曲がドイツからいかにアメリカに渡り、いかなる歌手の歌によって世界に知れ渡っていったかを、スウィンギーな歌唱で説明。第1部の中盤では、「和田誠コレクション・メドレー」として、大変なジャズ好きで島田歌穂・島健夫妻と深い親交を持っていたイラストレーターの和田誠(2019年死去)から譲り受けた約900曲に及ぶ譜面から楽曲がセレクトされ、「ユード・ビー・ソー・ナイス・カム・ホーム・トゥ」、「アイヴ・ガット・ユー・アンダー・マイ・スキン」等が、丁寧な歌唱と演奏によってつづられた。背後のスクリーンにはその譜面の表紙や、和田氏の描いたジャズメンの肖像画が映し出されたのも粋なところだ。
 第2部の冒頭に登場したのは、島田歌穂ふんする“シマダ教授”。ひとつの音符にひとつの単語を乗せることもできる英語と、ひとつの音符にひとつの音しか入らない日本語の違いをわかりやすく説明しながら、訳詞家の功績をたたえ、時に歌唱で歌詞・訳詞の違いを実践していく。さらに<ヨーロッパ生まれのミュージカルをJazzに>というコーナーでは、『エリザベート』からの「最後のダンス」、『レ・ミゼラブル』からの「民衆の歌」などを聴かせたが、歌唱もアレンジもスウィング感を忘れないもので、「ああ、ジャズに聴こえる」と、うれしい新発見をした気持である。また「マイ・フェイヴァリット・シングス」では、観客が手拍子で参加。切れの良い手拍子に乗って、アンサンブルと歌が炸裂した。
 vol.3の時に海宝直人がスペシャルゲストに迎えられたのも記憶に新しいところだが、このvol.4では、役者・歌手としてますます活躍が目覚ましい上白石萌音が登場。島田とはミュージカル『ナイツ・テイル─騎士物語─』で共演経験がある。この日はNHK朝の連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』からの「オン・ザ・サニー・サイド・オブ・ザ・ストリート」を島田とのデュエットで聴かせたほか、子供のころから好きだったという『ウィキッド』からの「ポピュラー」などを披露した。
 この「島田歌穂 Musical,Musical,Musical!!」と並ぶ恒例のライヴ・イベント、「島田歌穂&島健 Duo Xmas Special vol.13」は12月16日と17日に東京青山・スパイラルホールで開催される。

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