超豪華メンバーが、あっと驚く楽曲をプレイ。品川区の名物ジャズフェスが今年も盛大に開催

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■文:原田和典  写真:瀬戸優

 オールスター・メンバーによる、この日・この時限りの演奏が楽しめるジャズの祭典「第17回しながわジャズフェスティバル」が3月19日、品川区・荏原文化センター 大ホールで開催された。今年の出演メンバーは森山威男(ドラム)、市川秀男(ピアノ)、峰厚介(テナー・サックス)、中村誠一(テナー・サックス、クラリネット)、鈴木良雄(ベース)、高橋ゲタ夫(ベース)、本多俊之(アルト・サックス)、井上智(ギター)、松島啓之(トランペット)、市原ひかり(トランペット、ボーカル)、駒野逸美(トロンボーン)、浜田均(ヴィブラフォン)、片倉真由子(ピアノ)、小山太郎(ドラム)、キャロル山崎(ボーカル)という、例年にも増して強力な顔触れ。このような実力者たちが曲ごとにユニットを組み、誰もが知っているであろうメロディをジャズにアレンジして届けるのが、このフェスティバルの大きな特徴だ。

 第1部は、やはり荏原文化センター 大ホールで1月に開催された「​第3回品川区アマチュアジャズコンテスト」のウィナーたちによるパフォーマンス。ボーカル部門に輝いた女性4人組グループ“fun!”はバート・バカラック作の「アルフィー」を、市川秀男、鈴木良雄、小山太郎の伴奏で歌い、ビッグバンド“BCP”はコンテストでも披露したコンテンポラリーな「カンタービレ サード・ムーブメント」(作編曲ケニー・ワーナー)に加え、実にスウィンギーな「イン・ア・メロートーン」(作曲デューク・エリントン、編曲オリヴァー・ネルソン)も聴かせた。前述コンテストで審査員のひとりに「もっと伝統的な、スウィングするものも」というようなことを言われた、その要望に、水も漏らさぬ演奏で応えた形だ。サックス・ソリの迫力、5トランペットの厚みはもちろん、卓越したハイノート・プレイヤーがいるのもBCPの強みだろう。

fun!
BCP
BCP
BCP

 第2部は、【名曲集 あなたが選ぶ名曲ベスト7】。事前に候補曲をリストアップし、ファンの投票によって上位7曲を決定。それを錚々たるミュージシャンが届けるという、実にぜいたくな企画だ。今年の投票結果は次の通り。監修は市川秀男が務めた。

1位 そよ風の誘惑 (オリヴィア・ニュートン・ジョン)
2位 至上の愛 (ジョン・コルトレーン)
3位 あの鐘を鳴らすのはあなた (和田アキ子)
4位 ブルー・ボッサ (ケニー・ドーハム)
5位 マイ・ファニー・バレンタイン (スタンダード・ナンバー)
6位 ウィー・アー・ザ・チャンピオン (クイーン)
7位 007テーマソング (映画主題歌)

 オリヴィア、コルトレーン、ゴッド姉ちゃんという、目が回りそうになる上位3曲の並びに、これぞ同ジャズフェスのユニークネスと叫びたくなる。演唱は7位から順に行なわれ、いずれも参加ミュージシャンのひとりが編曲。「マイ・ファニー~」では市原、「あの鐘~」ではキャロルの歌声が光り輝いた。4部構成の組曲「至上の愛」からは第1部の「Acknowledgement」と第2部の「Resolution」が、峰、市川、鈴木、森山の4人によって取り上げられた。30周年の時も同じメンバーで演奏されたが(その時のセッションリーダーは森山)、今回のセッションリーダーは峰が務めた。コルトレーンが生きていた時代からジャズに没頭してきた彼らの重厚な演奏は、疑いなくこのフェスの目玉のひとつであった。「そよ風の誘惑」における本多と井上の軽快な掛け合い、トロンボーンを流麗に響かせるとともに「ブルー・ボッサ」に管楽器の精緻なアンサンブルを生かした名アレンジを施した駒野の才気も讃えたい。

市川秀男
峰厚介
鈴木良雄
森山威男
駒野逸美
キャロル山崎
(左より)井上智、本多俊之
市原ひかり

 第2部の熱気を保持したまま、第3部【しながわスプリングジャム】へと進む。セッションリーダーは高橋、井上、中村、山崎、小山、峰、森山。高橋は十八番のラテン調で会場を活気づかせ、中村はファンキーな書きおろし「0912隅田川オリジナル」で堂々たるブロウを展開。森山が叩く「シング・シング・シング」が聴けるのも、このフェスならではの趣向だろう。峰は先ごろ亡くなったウェイン・ショーターに捧げて、彼の代表曲「スピーク・ノー・イーヴル」を松島との2管クインテットで演奏した。1990年代のジャズ・シーンに彗星のごとく登場し、大野雄二&ルパンティック・シックスでも長く活動してきた松島は「いまこそ一番音が出まくって、アイデアに溢れているのではないか」と思えるほどの快演を、この日はいくつもの場面で聴かせてくれた。
 さまざまな曲調を叩き分ける小山の熱演、4本マレットを駆使した浜田のヴィブラフォン・プレイ、片倉の研ぎ澄まされたピアノ・タッチも、もっと聴きたいと思わせるに余りある歌心と凄みに溢れていた。まさしく充実の3時間半。来年はどんな趣向で楽しませてくれるのか、早くも楽しみになってくる。

高橋ゲタ夫
中村誠一
小山太郎
松島啓之
浜田均
片倉真由子

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