映画『ブルネロ 静かなる先見者』 喜びと安らぎのある暮らしを求めて---名士ブルネロ・クチネリの半生に迫る
■文:原田和典
世界有数のラグジュアリーブランド〈ブルネロ クチネリ〉の創業者にして、中世の村・ソロメオを再生。それが文化・環境・経済再生のモデルとして国際的に注目を集め、2021年にはマリオ・ドラギ首相の要請を受けてG20ローマサミットに登壇。人間主義的資本主義と人間的持続可能性について講演した名士、ブルネロ・クチネリを題材にした独創的な映画だ。
1953年生まれだから、すでに「実家の太さ」や「出身地がどこか」や「人脈や学閥」が出世に大いに関わって久しかった時代であったはずだが、そういう意味ではブルネロは、ごく「一般家庭の、ふつうの地方青年」であった。が、その頭の中には明確なヴィジョンがあって、理想に突き進むパワーがあった。この映画は、初期から現代にいたる「ブルネロ一代記」を、本人への取材、再現映像などさまざまな素材を用いて描き出す。不勉強にして私はこの映画で初めてブルネロの存在を知ったのだが、穏やかな表情や語り口の中にたたえられた火山のような情熱には大いに得るものがあった。
監督は『ニュー・シネマ・パラダイス』でアカデミー賞外国語映画賞を受賞し、鬼才音楽家エンニオ・モリコーネを題材とした『モリコーネ 映画が恋した音楽家』でも忘れ難い印象を残したジュゼッペ・トルナトーレ。音楽は『ライフ・イズ・ビューティフル』でアカデミー賞作曲賞を受賞したニコラ・ピオヴァーニが手がけており、つまり超一流の名匠によってブルネロ像が描き出されていくのである。11月6日からTOHOシネマズ シャンテほか全国公開。
『ブルネロ 静かなる先見者』
11月6日(金) TOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー
監督:ジュゼッペ・トルナトーレ
出演:ブルネロ・クチネリ、サウル・ナンニ、フランチェスコ・カンネヴァーレ、フランチェスコ・フェッローニ、エンマ・ファトーネ、ベアトリーチェ・カルラーニ
音楽:ニコラ・ピオヴァーニ
配給:ロングライド
©BRUNELLO CUCINELLI SPA AND MASI FILM 2025