映画『済州島 声たち』 国家権力による大虐殺を生き延びた4人の女性たちの証言。公式に記録されていない被害に迫る
■文:原田和典
50年近く隠蔽されていた大虐殺事件「済州島四・三事件」(チェジュド よんさんじけん)にスポットを当てた一作。どんなひどいことが行われていたのかについては、ぜひ各自お調べいただけたらと思うが、不勉強にして私は今年4月に我が国で公開された劇映画『済州島四・三事件 ハラン』を見る際まで知らなかった。そこで調べて、愕然とした。1947年から54年にかけて、7年以上も続いた“皆殺し作戦”である。
今回日本で上映される『済州島 声たち』には、この常軌を逸した日々のなか、文字通り命からがら生き延びた女性たちの証言がフィーチャーされている。先に触れたように50年近く、この事件は「なかったこと」にされていた。なのにその事件は確実にあった。命は奪われなかったにせよ、幼い頃にその犠牲となり、何十年も生きてきた人々の証言は重い。そして映画はさらに、国家の権力、および男尊女卑(資料には、彼女たちは「男性の妻」とか「娘」としか記されていない)にも言及する。
言葉を探しあぐねてしまうような作品であり、精神的な覚悟をもって向かい合う必要のある内容でもあろう。だが映画鑑賞の醍醐味は「エンターテイメントを楽しむ」ことだけではない。「知らないことを知る」ことの大切さを知っている者に、この作品は確実に響く。全州国際映画祭の特別部門ドキュメンタリー賞、EBS国際ドキュメンタリー映画祭の審査員特別賞と観客賞を受賞した作品。監督はチ・ヘウォン、企画・プロデュースは韓国ドキュメンタリー界の重鎮であるキム・オギョン。11月7日よりポレポレ東中野ほか全国順次公開。
『済州島 声たち』
11月7日(土)ポレポレ東中野ほか全国順次公開
監督:チ・へウォン『アングリーバードとバナナ合唱団』
プロデューサー:キム・オギョン『クロッシング・ビヨンド』 共同プロデューサー:キム・ソナ
出演:コ・ジョンジャ、キム・ヨンヨル、キム・ウンスン、ホン・スンゴン、チョ・ジョンヒ
日本語字幕:イ・ソンヒ ハン・ユキコ|字幕監修:伊地知紀子 © 2024 STORYON Co., Ltd. All rights reserved.
配給・宣伝:ストロール