タブレット純  ニューアルバムのリリース記念ホール・コンサートを盛大に開催。ムード歌謡からシャンソン、ロック、ジャズ、サンバまで、エンターテイナーの魅力全開

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■文:原田和典 写真:御堂義乘

 ムード歌謡の超名門コーラス“和田弘とマヒナスターズ”にも在籍経験のあるタブレット純が、長いキャリアを経て遂にファーストアルバム『タブレット純 大いに歌う~中川博之作品集~』を発表。そのリリースを記念して、11月26日に恵比寿ザ・ガーデンホールでワンマンコンサートを開催した。
 第1部では、その『タブレット純 大いに歌う~中川博之作品集~』の楽曲が収録順にすべて披露された。中川博之(1937~2004)は生涯で1500以上の楽曲を残した、ムード歌謡のマエストロというべき人物。タブレット純と中川作品との出会いは、小学6年の時に同級生の母親から「ラブユー東京」と「たそがれの銀座」のレコードを借りたことに始まるという。そこで中川博之という名を知ったそうだから、彼はつまり、その時点でもう、歌を単に楽しむだけではなく、ジャケット裏やレコード盤のクレジットにも注目して情報を吸収するタイプであったことがわかる。『タブレット純のローヤルレコード聖地純礼』(若くして散った椿まみへの、心に迫るトリビュートでもある)などの著書で花開く音楽リサーチャー/ライターとしての一面、その原点に触れる思いがした。
 アルバムには当然ながら演唱のみが収められているのだが、コンサートでは曲間に司会者の西寄ひがしとの和気あいあいのトークも繰り広げられた。物真似もまじえながら、声優顔負けの声の使い分けを行なって会場を沸かせるタブレット純と、時にそれを盛り立て、話題がそれた時には軌道修正してゆく西寄とのコンビネーションが快い。中川博之と夫妻で数多くの共作を残した作詞家・髙畠じゅん子が来場していることも紹介された。
トラック(伴奏)は基本的に昭和期に制作されたものが使われているとのことで、いわゆる打ち込みとは趣の異なる、実にオーガニックな世界を生んでいた。サックスのエロス、アコースティック・ギターのなまめかしさ、こうした楽器の響きも、ムード歌謡のムード性を高めていたのだろう。「夜の銀狐」を聴いていると、自分が生まれる前の高度成長末期の銀座の夜—―小林旭の主演映画『女の警察』に描かれているような—―の中に放りこまれたような気分になる。


 第2部は北園優(キーボード)、石井夕紀(ヴァイオリン)、サリー久保田(ベース)を迎えたバンド編成によるステージ。タブレット純の持つ幅広い音楽性が、いっそう発揮された感じだ。シャンソンの「サン・トワ・マミー」、フランク永井への表敬も込めて低音で迫るジャズ調の「16トン」、自作「そんな事より気になるの」などを快調に歌い、ギターとウクレレを足して割ったような6弦楽器“ギタレレ”を弾きながらの「別れのサンバ」、エレクトリック・ギターに持ち替えての「堕天使ロック」などでは演奏面でも巧者ぶりを示した。アンコールでは「帰ってきたヨッパライ」がとびきりの異彩を放った。ザ・フォーク・クルセダーズのヴァージョンではテープ操作によるカン高い歌声がフィーチャーされていたが、タブレット純はタイニー・ティムばりのファルセット、そして妖艶な衣装で魅了した。途中で北園優が放つ関西弁も利いている。
 全23曲、まさに大盤振る舞いのステージ。歌、トーク、ステージング、コスチューム・・・・・タブレット純の持つエンターテイナーとしての魅力にすっかり酩酊させられた。

【タブレット純 大いに歌う2025 ニューアルバムリリース記念ライブ セットリスト】 
<第一部>  
1  わたし祈ってます
2  足手まとい
3  生命のブルース
4  昨日の女
5  意気地なし
6  ラブユー東京
7  たそがれの銀座
8  サヨナラ横浜
9  さようならは五つのひらがな
10  夜の銀狐
<第二部>
11  サン・トワ・マミー
12  そんな事より気になるの
13  恋人よ我に帰れ
14  16トン
15  べサメムーチョ
16  別れのサンバ
17  湯の町エレジー
18  青春サイクリング
19  あの素晴らしい愛をもう一度
20  堕天使ロック
21  銀河に抱かれて
<アンコール>
22  帰ってきたヨッパライ
23  マイ・ウェイ

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