憧れの田舎暮らしがこんなふうになるとは。映画『嗤う蟲』、1月24日公開
「村八分」「村社会」を描き出す、背筋の凍るホラー作品
■文:原田和典
「昔からの風習を何の疑問もなく受け継ぐこと」、「新しく移住してきた者と、地元村民との距離感のバグ」、「生まれ親しんだ故郷の、絶大な権力を持つ“長”であり続けたいというエゴ」、「長いものに巻かれることこそが美徳といわんばかりに行動する村民」、「警察や法律のなすすべのなさ」などなど、この映画を見ているといろんなファクターが浮かんできた。では誰が悪いのか、というのは、おぼろげながらうかびあがってくるのだが、村民には何の悪気もないし、何というのだろう、自分たちの振る舞いがこれまでとこれからの村の安泰にもつながっているのだ、とばかりに、得意げですらある。それはそうだろう、「さすがに、おかしいんじゃないか」と疑問を持ってしまったら、自治会長の意向にそぐわない行動をしてしまったら、その瞬間から息を吸うことができるかどうかもわからないのが、この村であるからだ。
田舎暮らしに憧れるイラストレーターの杏奈と、脱サラした夫・輝道は都会から、この麻宮村に移り住んできた。まわりは自然がいっぱい、一軒家での生活はふたりを大いに活気づけたことだろう。しかも、ふたりは村の絶対的権力者である自治会長夫妻に大いに気に入られてしまった。それが、果たしてふたりの生活にどのような効果を及ぼすか。地方出身者にも、都会出身者にも、同質の「恐怖」が訪れる映画なのではないかと、私はひとり考えている。
監督:城定秀夫、脚本:内藤瑛亮、音楽:ゲイリー芦屋。出演は深川麻衣、若葉竜也、杉田かおる、田口トモロヲほか。特に田口トモロヲは特筆すべき怪演を見せる。タイトルの読み方は「わらうむし」。1月24日(金)より新宿バルト9ほか全国公開。
2024年/日本/カラー/シネスコ/DCP5.1ch/99分/PG-12
waraumushi.jp
製作幹事:ポニーキャニオン
配給:ショウゲート
製作プロダクション:ダブ
Ⓒ2024映画「嗤う蟲」製作委員会
劇場公開日:2025年1月24日