映画『RYUJI 竜二』昭和から平成へと移りゆく時代を背景に、あの『竜二』が新たに生まれ変わる
■文:原田和典
金子正次が主演・脚本を務めた1983年・川島透監督映画『竜二』を映画館で見たのはいつだったか。自分が上京した1990年代は東京じゅうにレイトショーをかけている名画座があったし、映画がかかる前には予告編が流れていたので、自分は最初にその予告編で『竜二』の、野菜の値上がりが激しいとか言っている妻に竜二が狂ったようにブチ切れるところ、萩原健一の歌う主題歌「ララバイ」に何度も接して、それから本編を鑑賞した記憶がある。金子にとって命がけの作品であった、と知ったのは、さらに後のことだ。
そして今回、その『竜二』にオマージュをささげた『RYUJI 竜二』が上映される。時代背景は変わり、今回描かれるのは、1984年(昭和59年)から1990年(平成2年)にかけての、新宿・歌舞伎町。家にはビデオデッキがあるが、テレビはブラウン管で、SNSはまだない。竜二は情に厚く、腕っぷしは強い。後輩には慕われ、いざというところではきっちりとストレンクスを見せつける。が、子供も生まれた今、妻のことを考えても、いつまでも裏社会の住人にとどまっているわけにはいかない。そこでひとまず堅気になり、懸命に働くのだが、有能な暴力団員だったから、裏社会でとにかく「才能を惜しまれる」のである。そこに、かつての兄弟分が薬物におぼれた状態であらわれ、因縁のある連中もあらわれ・・・
竜二の心は振り子のように動いているはずだが、どこかクールに、堅実さを失うことなく物事に対処していく。誰も傷つくことのない世の中になればいいのに、と思いながら、私は目を凝らして最後まで見た。裏社会系につきものの暴力、恫喝、血、凶器などの描写は極めて控えられているように感じたが、私はそこに制作側の「現代人としての映画表現の美意識」をみる。監督・水田伸生、企画・中沢敏明。出演は柳楽優弥、川栄李奈、三宅健、萩原利久、JUNONほか。10月30日から全国公開。
『RYUJI 竜二』
10月30日(金) 全国公開
監督:水田伸生
原作:金子正次「竜二」
出演:柳楽優弥、川栄李奈、萩原利久、JUNON(BE:FIRST)、田中美里、RYUKI(MAZZEL)、千原ジュニア、三宅健、伊藤英明
配給:カルチュア・パブリッシャーズ